この記事は「ライブでソフトシンセを使う理由(前編)」の続きです。
ライブでソフトシンセを使うメリット
前編では普通のハードシンセについて下記のデメリットを挙げた。
- 移動が大変
- 軽いシンセは音が悪いし操作性が悪い
- エディットがストレスフル
- 無茶振りに対応できない
裏を返せば、ソフトシンセでは上記の問題が克服できているということになる。
- 移動が楽
スタジオやライブハウスのステージピアノを借りれる場合は、移動が楽。
重量でいうと5kg以下である。これはギター本体3.5kg+ケース1.5kg(ざっくりとした平均値)に匹敵する軽さであり、いかに身軽かがお分かりいただけるだろう。
機材 | メーカー | 名称 | 重量 |
パソコン | Apple | MacBook Pro M3 Pro | 約1.6kg |
オーディオ インターフェース | Antelope | Zen Q Synergy Core Thunderbolt | 約0.8kg |
USB-MIDI インターフェース | MIDITECH | MF2-1x1 | 約0.12kg |
バッグ | MUSICWORKS | EBB3H-L/BK | 約2.07kg |
合計 | 約4.59kg |
実際は電源とかケーブルとかの重量もあるのでもう少し増えます
- 音が良いし操作性が良い
愛用している鍵盤楽器系ソフトシンセKeyscape(Liteインストール)では、下記10音色だけで約29GB。
Hohner Clavinet C
https://www.spectrasonics.net/support/knowledgebase_view_topic.php?id=26&categoryID=15
JD-800 Crystal Rhodes
LA Custom C7 Grand Piano
MK-80 Contemporary Rhodes
MKS-20 E Piano
MKS-20 Electric Grand
MKS-20 Vibes
Rhodes – Classic Mark I
Rhodes – LA Custom “E”
Wurlitzer 140B
一方、各社フラッグシップモデルのPCM容量は下記である。
これはピアノも民族楽器もドラムの音も入れての容量である。
メーカー | シリーズ | 容量 |
YAMAHA | Montage M | 10GB |
ROLAND | Fantom EX | 非公開 |
KORG | NAUTILUS | 2.3G |
波形の容量でいうと圧倒的にソフトシンセが大容量なのである。
- 操作性がよくエディットしやすい
またソフトシンセを用いる場合はMacの14.2インチ液晶とキーボード・タッチパッドが使える。
操作性についてあえて触れる必要はないと思う。パソコンでは音色の並び替えもドラッグ&ドロップで行えるし、数クリックするだけで目的の機能に辿り着ける。
ハードシンセのように◯◯ボタンを押して◯◯メニューに入り、そこから◯◯ボタンを押して、つまみをひねってパラメーターを変更、などする必要はないのだ。
- 無茶振りに対応できる
効果音を入れたければ、サンプラーを立ち上げ、ボタンなり鍵盤なりにアサインして鳴らすことも可能である。またキーボードをゾーンに区切り異なる音色を使用することも無限にできてしまうし、音を重ねまくることも可能である。
ライブでソフトシンセを使うデメリット
- パソコンの処理能力に左右される
当然のことながら容量の大きなソフトシンセを動かす場合や、大量のソフトシンセを立ち上げる場合は処理能力が追いつかないパソコンもある。 - レイテンシーが発生する
レイテンシーとは、キーボードを弾いてから実際に音が鳴るまでの時間である。
ハードシンセでもレイテンシーはあるが、各メーカーの作り込みでできるだけ抑えている。
私の場合はThunderboltのオーディオインターフェースを使用することで6ms程度となっており、敏感な人ならば遅延を感じるかもしれないが、実用上は問題ないと考えている。
音速が340m/s→34000cm/sとすると1秒が1000msなので、6msは34000÷1000✖️6=204cmに該当し、約2m先からの音が聞こえてくる時間差と同程度である。 - ハードシンセに比べてトラブルが起こる可能性が高い
ハードシンセは電源を入れてしばらく待つと使用可能だが、パソコンは機器との相性問題やソフトウェアに起因する不安定さがリスクとして残る。
相性問題はMacを選択すればほとんど排除できるし、ソフトウェアに起因する不安定さも、じっくり使い込んだり、ソフトウェアのアップデートを行うなどをしてある程度は対策できる。
一時期は不安定で使い物にならないと言われていたが、今はそのようなことはなく、安定している。
まとめ
ということで主張したいことを書いてきたが、最終的には自分のスタイルを見出し、楽しく活動できることこそが最終的な目的である。
例えば路上ライブなどにはソフトシンセは不向きであると思うし、複雑なことをせず簡単に済ませたいのであれば別なソリューションはたくさんあると思う。
自分の「これだ!」を見つけ、皆さんが楽しく快適にバンド活動できることを切に願っている。