本記事はPlugin BoutiqueよりPitch Innovations Fluid Chords 2のレビュー用ライセンスをご提供いただき、実際に使用したうえで執筆しています。記事内容・評価についての指定は受けていません。

Pitch Innovationsの「Fluid Chords 2」を触っていて、最初に感じたのは「思っていたよりずっと普通に使える音源だ」ということでした。
名前の通り、コードからコードへ滑らかに遷移させるGlideが大きな特徴なのですが、実際にはそれだけではありません。
内蔵音源はかなり実用的で、GlideをOFFにすれば普通のPad音源としても使えます。コード生成、2音色のブレンド、STRUM、PUMPER、外部MPE音源への対応まで含めると、単なるコード・グライド専用ツールというより、現代的なコード演奏環境をひとつにまとめたプラグインと考えた方が実態に近いと感じました。
そして何より、Fluid Chords 2を触っていると、普段の鍵盤演奏ではあまり意識しない「コードとコードの途中」に耳が向きます。
この記事では、実際に鍵盤奏者として弾いて感じたことを中心に、Pitch Innovations Fluid Chords 2をレビューしていきます。
音源・基本機能
Fluid Chords 2の音質|内蔵音源は現代的で使いやすい
まず個人的にかなり刺さったのが、内蔵音源です。
Factory Presetには、
- Cinematic
- HipHop & RnB
- Pop
- Lo-Fi
- Experimental
- EDM
といったカテゴリが用意されています。
このあたりのジャンルを普段作っている人なら、かなり相性がいいと思います。
サウンドは極端にエッジが立って前へ飛び出してくるわけでもなく、逆に奥へ引っ込みすぎるわけでもありません。
音質そのものを派手に主張するというより、アレンジの中に置きやすいラインです。
Fluid Chords 2はGlideやSTRUMによって音程そのものがかなり動くので、音色まで主張が強すぎると耳障りになりやすい。その意味でも、このくらいのバランスは使いやすいと感じました。
音色の方向性はかなり現代的で、おしゃれです。しかも「雰囲気はいいけど曲では使いにくい」というタイプではなく、実用性も高い。
触っているだけで「あ、この音ならこういう曲に使いたい」が次々に出てきました。
個人的には、今後作る曲の中で何曲かはメイン音源として普通に使いそうです。
GlideをOFFにすれば普通のPad音源として使える
Fluid Chordsという名前だけを見ると、常にコードを滑らせて使う音源のように思えます。
しかしGlideは画面右側からON/OFFを切り替えられます。
そのため、普通のPadやPluck系音源として使うことも可能です。
Trigger Modeでは、レガートで演奏するとコード間が滑らかに遷移しますが、ノンレガートで弾けば普通のPluckやHitのような発音になります。
つまり、「Fluid Chords 2を使ったら、何でもかんでもミョィィィィンさせなければいけない」というわけではありません。これは意外と大事なポイントです。
特殊効果専用のプラグインではなく、通常演奏も含めた中で必要なところだけGlideを使えるからこそ、実用的です。
Trigger Mode|8つのコードをキー1つで呼び出せる
Fluid Chords 2のTrigger Modeでは、あらかじめ最大8つまでコードを記憶させておき、それぞれを1つのキーで呼び出せます。
つまり複雑なボイシングを毎回両手で押さえなくても、単音キーをトリガーするだけで登録したコードを鳴らせます。
制作では、コード進行を素早く試したいときや、複雑なボイシングを一定の形で何度も再現したいときに便利です。ライブでもかなり使い道があります。例えば鍵盤をスプリットして、
- 左手側:Fluid Chords 2のTrigger Mode
- 右手側:シンセリードや別音色
という構成にしておけば、左手は単音でコードを切り替えながら、右手でリードやフレーズを演奏できます。
コードを両手で押さえる必要がないぶん、演奏の自由度がかなり上がります。
Trigger Modeでも、レガートで次のキーへ移ればGlideし、ノンレガートで弾けば通常のPluckやHitのように発音できます。そのため、単なる「コードをワンキーで鳴らす機能」ではなく、登録したコード進行そのものを演奏素材として扱えるモードだと感じました。
コード提案機能|キー・ジャンルからコードを生成
Fluid Chords 2にはコード提案機能も用意されています。
キー、Major / Minor、ジャンルを指定すると、コードの候補を生成してくれます。
ジャンルは、
- EDM
- Pop
- Hip Hop
- Rock
- Jazz
- Cinematic
- Lo-Fi
から選択できます。
これは音色プリセットのカテゴリとは別の機能です。
実際に試すと、PopとHip Hopでも提案内容には変化があり、Hip Hopでは7thや9thを含むコードが増える傾向がありました。JazzではBlues的なバリエーションが生成される例もあります。もちろん「Jazzらしいコードとは何か」は人によってかなり違いますし、コード生成機能だけで曲を完成させるようなものではありません。
ただ、初心者がコード進行の候補を探す用途や、ある程度弾ける人でも制作中に行き詰まったときの刺激としては十分使えそうです。
2つの音色をA/Bでブレンドできる
音色はA/Bの2レイヤー構成です。2つの音色を選び、DJのクロスフェーダーのような感覚で混ざり具合を調整できます。最近のシンセではよく見かける方式ですが、やはり便利です。
片方をPad、もう片方をTexture寄りにしたり、PluckとAtmosphereを混ぜたりと、単体音色よりも少し複雑な質感を簡単に作れます。
A/BそれぞれにDelayとReverbがあり、各レイヤーごとに量とON/OFFを設定可能です。
内蔵Synth・Sampler・外部MPE音源に対応
音源として使用できるのは、
- 内蔵Synth
- 内蔵Sampler
- 外部MPE音源
です。
外部音源を使えるのはFluid Chords 2の大きな魅力ですが、少し注意点があります。
MPE対応のソフトシンセだからといって、すべてのプリセットがそのままFluid Chords 2で使えるとは限りません。
実際にUVI Workstationで試したところ、MPE対応パッチを選ぶことで正常に動作しました。
音源そのものがMPEに対応しているかだけでなく、選択しているパッチ側がMPE向けに設定されているかも確認する必要があります。
外部音源でうまく動作しない場合は、
- 音源がMPE対応か
- パッチがMPE対応か
- Pitch Bend RangeがFluid Chords 2側と一致しているか
を確認するとよいでしょう。
Fluid Chords 2を触ってみた
Fluid Chords 2の使い方|Glide Timeを設定する
Glideの遷移時間は、かなり柔軟に設定できます。
設定方法は大きく3種類あります。
ms指定
ミリ秒で直接設定する方法です。音楽的な拍とは関係なく、一定時間で遷移させたい場合に向いています。
テンポ同期
何拍かけて遷移するかを設定できます。曲のテンポに合わせた演出をしたい場合はこちらが便利です。
Velocity連動|タッチでGlide速度を変える
個人的に面白いと思ったのがこれです。
強く弾けば速く遷移し、弱く弾けばゆっくり遷移します。
しかも速度のレンジも設定可能です。
つまり、Glide Timeをオートメーションで逐一描かなくても、鍵盤のタッチだけで遷移速度を表現できます。
鍵盤奏者にはかなり演奏的な機能です。
STRUM|声部を時間差で動かす
Glideはコード全体を一斉に動かすこともできます。
一方でSTRUMを使うと、各声部の遷移タイミングをずらせます。
一般的なギターのストラム再現というより、「コードを構成する各音が、時間差で次の位置へ移動する」と考えた方がわかりやすいです。
方向も切り替え可能で、上方向・下方向のどちらから動かすかを選べます。
STRUMを大きくすると、コード全体が一瞬で次の和音へ移るのではなく、内声がひとつずつ動いていくような進行になります。
これがかなりエモいです。
特にMaj7系のコードをパラレルモーションさせると、遷移途中の響きまでひとつの和声として聞こえてきます。Maj7のパラレルモーション自体は普通のシンセでもできます。
Fluid Chords 2の面白さは、そこからさらに各声部の移動タイミングをコントロールできる点です。
3音から4音、4音から3音でも声部が分裂・統合する
コードの構成音数が変わる場合も面白い動きをします。
3音から4音へ遷移するときは内声が分裂するように動き、逆に4音から3音では統合されるように聞こえます。
転回形でも、基本的には一番高い音は遷移後の一番高い音へ、一番低い音は遷移後の一番低い音へ向かいます。
フォークが広がったり閉じたりするようなイメージ、で伝わるでしょうか…(汗)
これによって、単純な全音程一括Pitch Bendとは違う、コードとしての動きを作れます。
Fluid Chords 2の演奏モード|TRIGGERとREALTIMEの違い
Fluid Chords 2にはTRIGGER ModeのほかにREALTIME Modeがあります。
REALTIME Modeでは、コードを弾いた瞬間ではなく、鍵盤を離したタイミングを使って遷移を開始できます。
この操作感は最初少し独特ですが、理解するとかなり面白いです。
REALTIME:TIME Modeの使い方
TIME Modeでは、最初のコードは押鍵した瞬間に鳴ります。
次のコードは一度押さえて、鍵盤を離した瞬間にコードチェンジが始まります。
何もしなければ指定した拍数が経過したところで解除されます。
指定時間の途中でも別のコードを弾き、離鍵すればそこから次の遷移が始まります。
素早く反映させたい場合は、スタッカート気味に短く弾くと扱いやすいです。
REALTIME:PEDAL Modeの使い方
PEDAL Modeではサステインペダルを踏んでいる間がGlideモードになります。
ペダルを踏んだ状態でコードを弾き、鍵盤を離すことで遷移がスタートします。
ペダルを踏んでいない場合は通常演奏です。
つまり演奏中に、通常コード → ペダルON → Glide → ペダルOFF → 通常コード
という切り替えを足元で行えます。
ここだけ滑らせたい、という場所をリアルタイムで選べるのが便利です。
ピッチベンドホイールに手を伸ばさなくていい
鍵盤奏者として地味に大きいのがこれです。
普通のシンセで大きく連続的なピッチ移動を作ろうとすると、ピッチベンドホイール、リボンコントローラー、MPE対応コントローラーなどを操作する必要があります。
Fluid Chords 2では両手を鍵盤に残したまま、コード単位の連続的なピッチ遷移を作れます。
これはライブでも制作でもかなり楽です。
表現を増やしながら、普段の鍵盤演奏のフォームを崩さなくていい。
Fluid Chords 2の価値は、このあたりにもあると思います。
鍵盤の「階段状の音程変化」から少しだけ自由になる
鍵盤楽器は構造上、基本的には離散的な音程を弾く楽器です。
Cを弾いて、次にDを弾く。
そこには明確な段差があります。
Fluid Chords 2は、その段差の途中を少しだけ演奏できるようにしてくれます。
もちろんOsmoseやROLIのように、インターフェースそのものを連続的な表現へ変える製品とは違います。
いつもの鍵盤、いつものコード演奏を維持したまま、その間だけ流動化する。この距離感がちょうどいいです。
個人的には、「鍵盤楽器の階段状の音程遷移という束縛から、ほんの少しだけ逃れさせてくれるツール」という印象を持ちました。
実践的な使い方
Fluid Chords 2の活用例|制作・アレンジでの使い方
一方で、Real-Time Modeの離鍵トリガーには注意も必要です。
普通のピアノやPadを同じ鍵盤でリアルタイムレイヤーすると、そちらは押鍵時に次のコードへ移ります。
Fluid Chords 2は離鍵後に遷移が始まるため、長いGlideでは両者のタイミングがずれます。
ライブで同じ鍵盤から完全に重ねて弾く場合は少し扱いにくい場面もありそうです。
ただし、制作では逆にこの時間差を利用できます。
ピアノが先に次のコードへ着地し、その後ろでFluid Chords 2だけがゆっくり追いついてくる。
ピアノをコードの輪郭、Fluid Chords 2をコード間の移動や空気として役割分担すると、面白い景色が作れそうです。
Robert Glasper周辺のジャズR&BやNeo Soulを連想するような、アコースティックピアノの輪郭と流動的なシンセレイヤーの組み合わせとも相性が良さそうです。
長いGlideはIntro・Outro・Dropで映える
Fluid Chords 2のGlideは面白いです。
ただし、面白いからといって毎コード長く滑らせればいいわけではありません。
長いGlideを使うと、他のコード楽器はすでに次の和音へ着地しているのに、Fluid Chords 2だけはまだ遷移途中という状態が起こります。
その途中で一時的に別のテンションや響きが発生するので、場合によっては他のコード楽器とぶつかります。
これは欠点というより、アレンジャー側が「途中の和声まで設計する必要がある」という話です。
個人的には、
- イントロ
- アウトロ
- Final Chorus前のDrop
- 曲中で一度だけ大きく空間を開ける場面
- バンド登場時のSEやイントロ
などで特に映えそうだと感じました。
アリーナクラスのライブで、暗転から長いコードグライドを鳴らして、着地と同時にバンドイン。
かなり映えると思います。
歌モノではGlide Timeを長くしすぎない
歌モノのライブで伴奏として使う場合は、Glide Timeを長くしすぎない方がいいかもしれません。
ボーカリストによっては伴奏から音程を取るため、コードが長時間遷移していると、着地点のピッチを見失う可能性があります。特にフレーズの頭を伴奏から取るタイプのボーカリストでは注意が必要です。
歌伴では、ここぞという場所だけ使うくらいがちょうどよさそうです。
オルガン的な補助レイヤーとして使う
これは個人的に試してみたい使い方です。
オルガンの代わりに、オルガンっぽい音色を高音域で薄く鳴らし、そこだけ少しGlideさせる。
通常のPadよりも動きがありつつ、主役のピアノやボーカルを邪魔しない補助レイヤーとして使えそうです。
そもそもオルガン自体、コードをただ静的に鳴らすだけではなく、Glissandoや短い装飾音、スライドするようなフレーズを交えながら演奏されることの多い楽器です。
特にGospelやR&B、Soul周辺では、音と音の間を装飾しながらコードをつないでいく奏法がサウンドの一部になっています。
もちろんオルガンのGlissandoとFluid Chords 2のコードGlideは別の奏法ですが、「コードの着地点だけでなく、その間にも動きを与える」という意味では隣接した表現領域にいるように感じます。
そのため、オルガンが担っていた高域の薄い補助レイヤーをFluid Chords 2に置き換えたり、オルガンと交代で使ったりするのは意外と自然です。
R&BやSoul系のアレンジでは特に面白いと思います。
Fluid Chords 2を全面に出すのではなく、薄く仕込む。
こういう使い方もありだと思います。
EDM・Reggae・Dubでは飛び道具にも使える
コードだけでなく、ピッチ移動そのものを音響効果として使うこともできます。
例えばEDMなら、3オクターブ離したCとC#、CとDを交互に弾いて、大きなGlideを作ればサイレン的な効果になります。ただしサイレンだけなら、普通のモノフォニックシンセにPortamentoやDetuneを使っても作れます。
そのため、これはFluid Chords 2独自の強みというより応用例です。
DubやReggae的な文脈でも、長いピッチ移動をDelayやReverbに投げて空間的な飛び道具として使うのは面白そうです。
Fluid Chords 2と相性のいいジャンル|Hip Hop・R&B・Gospel
Factory PresetにHipHop & RnBカテゴリが用意されていることからも、このジャンルが主要なユースケースのひとつとして意識されていることがわかります。
実際に弾いてみても、Hip HopやR&Bではコード全体が滑らかに移動する表現自体が、ひとつのアイコニックなサウンドになっていると感じました。
これは私だけの印象でもなさそうです。
GospelやUrban Music向けの音源を数多く手がけるGospel Musiciansには、Glideサウンドだけにフォーカスした「Pure Glide Urban Synth Expansion」という製品があります。200種類のGlide専用プリセットを収録し、R&BコードやGospelでの使用を明確に想定した音源です。
その製品ページではGlideについて、こんな表現まで使われています。
“If you’ve been in urban or gospel music for any length of time, you already know—the Glide tone is a must-have.”
UrbanやGospel Musicにある程度触れてきた人なら、Glide Toneが「must-have」であることは知っているはず、というかなり強い言い方です。
さらに同社は、Glideを「notes seamlessly melt from one pitch to another」と表現し、R&Bのコード、Cinematicなスウェル、Gospelなどで使うサウンドとして位置づけています。
こうした製品が単独で成立していることを見ても、Glideは単なる珍しい特殊効果ではなく、少なくともUrban / Gospel / R&B周辺ではすでに定着した音楽的な語彙のひとつと考えてよさそうです。
Fluid Chords 2は、その表現を新しく発明したというより、従来のシンセでも使われてきたGlideという語法を、和音単位でより自由に、しかも鍵盤奏者が扱いやすい形へ拡張したツールと捉えると、その立ち位置がわかりやすいと思います。
Fluid Chords 2の音作り|MACROS・PUMPER・COMP
内蔵シンセには基本的なパラメータがMACROSとして用意されています。
さらに任意のパラメータを選択して変更することもできます。そのため、プリセットを選んで終わりではなく、必要に応じて音色を追い込めます。
MASTERにはPUMPERも搭載されています。
いわゆる周期的なダッキングやゲート的な動きを加える機能で、用意されたカーブを選ぶだけでなく、自分でカーブを編集することも可能です。
MASTER COMPもあり、Attack、Release、Drive、Dry / Wetを調整できます。
Fluid Chords 2の中だけでも、かなり音を仕上げられます。
負荷・UI・ライセンス
スタンドアロン対応|ライブでも使える
Fluid Chords 2はスタンドアロンでも使用できます。
DAWを立ち上げずに演奏できるため、ライブ用途にも向いています。
Dark Modeも用意されており、個人的にはライブで使うならDark Modeを選びます。
暗いステージ上で明るいGUIを開くより、視認性と演出の両面でこちらの方が自然です。
Fluid Chords 2のCPU負荷|Intel Macでも32 samplesで安定
スタンドアロンで負荷も確認しました。
検証環境は以下です。
- Mac mini 2018
- 3.2GHz 6コア Intel Core i7
- RAM 64GB
- PreSonus Quantum 2626
- 48kHz
32 samplesでは安定して動作しました。16 samplesまで下げるとプチノイズが入りました。
2018年のIntel Macで32 samples動作が安定しているなら、少なくとも内蔵音源を使った通常用途ではかなり軽い部類だと思います。
音色切り替えもクリック後すぐに反映されました。
プリセット選択は高速、Favorite機能はなし
音色選択については、巨大なカテゴリーブラウザを掘っていくタイプではありません。
メニューや「< >」ボタンを使って順番に切り替えていく方式です。Favorite機能はありません。
そのため「大量の音色をタグ管理して探したい」という人には少し物足りないかもしれません。
一方で、切り替えそのものは速い。じっくり検索するより、次々に鳴らしながらインスピレーションを探す設計だと感じました。
Undoは20回・ライセンスは3台まで
Undoは現在の状態から20回まで遡れます。実用上は十分でしょう。
ライセンスは3台まで使用できます。制作マシン、ノートPC、ライブ用PCと分けたい人には使いやすい条件です。
総評
Fluid Chords 2はどんな人におすすめ?
Pitch Innovations Fluid Chords 2でしか絶対に作れない音ばかりではありません。
Maj7のパラレルモーションも、サイレンも、単純なGlideも、工夫すれば普通のシンセで作れます。
それでもFluid Chords 2には価値があります。
コードを弾いた状態から、そのまま遷移の仕方を試せる。
- ピッチベンドホイールへ手を伸ばさなくてもいい
- STRUMで内声をずらせる
- 音数が変われば分裂・統合する
- Velocityで遷移速度を変えられる
つまり、思いついた表現を演奏としてすぐ試せます。
この「試すまでの距離が短い」ことがFluid Chords 2の大きな価値だと思います。
コードではなく、“コードとコードの途中”を楽しむ
音楽では普通、コードAとコードBという着地点を意識します。でもFluid Chords 2を使うと、その間にある時間まで音楽として意識するようになります。
春と夏の間。
夏と秋の間。
秋と冬の間。
冬と春の間。
季節そのものより、季節の境目に少し切なさやエモさを感じることがあります。
Fluid Chords 2も、それに近いところがあります。
コードそのものではなく、コードが別のコードへ変わっていく途中に面白さがある。
鍵盤は本来、点を弾く楽器です。Fluid Chords 2は、その点と点の間にも少しだけ演奏する余地を作ってくれます。
この「音楽は途中がおもしろい」という感覚については、別記事でGlideやDJ、和声のTransitionという観点から詳しく掘り下げています。

まとめ|Fluid Chords 2は鍵盤奏者を少し自由にする
Pitch Innovations Fluid Chords 2は、鍵盤奏者にとって「階段状の音程変化」という束縛から、ほんの少しだけ逃れさせてくれるツールだと思いました。
完全に新しい演奏インターフェースへ移行するわけではありません。
いつもの鍵盤を使い、いつものコードを弾きながら、その途中だけを少し自由にできる。
この距離感が絶妙です。
特にHip HopやR&B、Neo Soulなど、ブラックミュージックをベースにした楽曲を作る人なら、このコードグライドという表現そのものに馴染みがあり、価値を見出しやすいと思います。
一方で、長いGlideを何でもかんでも使えばよいわけではありません。
他のコード楽器やボーカルとの関係を考えながら、Intro、Outro、Dropなど、ここぞという場所で使う。あるいはピアノの後ろに薄く重ね、コードの輪郭ではなく「移動」を担当させる。
そうしたアレンジの工夫まで含めて楽しめる人に向いた製品です。
価格に対してどう感じるかは、この表現をどれだけ使うかによるでしょう。
ただ、「コードを滑らせたい」と思った瞬間に、すぐ演奏として試せる。
そしてそこから、「こんな使い方もできるかもしれない」と新しい発想が出てくる。
個人的には、そのインスピレーションへの入口に価値を感じました。
あなたの楽曲にも、“途中が楽しい”を取り入れてみてはいかがでしょうか。

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